労働条件通知書と雇用契約書の違い|どちらが必要なのか

労働条件を示す書面と契約の接続を、奥行きのある空間で表したイラスト 契約・精度の違い

注意書き

この記事は、労働条件通知書と雇用契約書の違いを一般的に整理するものです。

実際の扱いは、雇用形態、会社の運用、契約内容、就業規則によって変わることがあります。

不安が強い場合は、会社の担当窓口、労働基準監督署、社会保険労務士や弁護士などに相談すると、整理しやすくなるかもしれません。

労働条件通知書と雇用契約書は、名前が似ていて混乱しやすい

入社時や契約更新時に、

「労働条件通知書を渡します」

「雇用契約書に署名してください」

と言われることがあります。

どちらも働く条件に関係する書類なので、同じもののように感じるかもしれません。

ただ、役割は少し違います。

労働条件通知書は、会社が労働条件を働く人に知らせるための書類です。

雇用契約書は、会社と働く人が雇用契約の内容に合意したことを確認するための書類です。

この記事では、定義、仕組み、確認ポイントの順に整理していきます。

まず結論

労働条件通知書は、会社が労働条件を明示するための書類です。

雇用契約書は、会社と働く人が契約内容に合意したことを確認するための書類です。

実務では、「労働条件通知書兼雇用契約書」として、1つの書類にまとめられることもあります。

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、会社が働く人に対して、賃金、労働時間、契約期間、就業場所、業務内容などの労働条件を知らせる書類です。

労働基準法では、使用者が労働契約を結ぶ際に、労働条件を明示する必要があるとされています。

ここでいう「明示」とは、働く条件を相手に分かる形で示すことです。

たとえば、次のような内容が関係します。

・契約期間
・就業場所
・業務内容
・始業時刻、終業時刻
・休憩時間
・休日
・賃金
・退職に関すること

また、2024年4月からは、就業場所や業務内容の変更範囲など、明示すべき事項が追加されています。

そのため、古い書式のままになっていないかも、確認したいポイントです。

雇用契約書とは

雇用契約書とは、会社と働く人が「この条件で働くことに合意しました」と確認するための書類です。

多くの場合、会社名、本人名、契約期間、賃金、勤務時間、業務内容などが書かれ、双方が署名や押印をします。

労働条件通知書が「会社からの通知」という性質を持つのに対して、雇用契約書は「双方の合意を確認する」という意味合いが強くなります。

つまり、似た内容が書かれていても、書類の目的が少し違うのです。

どちらが必要なのか

雇用されて働く場合、会社には労働条件を明示する必要があります。

そのため、正社員、契約社員、パート、アルバイトなどで働く場合は、労働条件通知書にあたる内容を確認することが大切です。

一方で、雇用契約書は、会社ごとの運用によって扱いが分かれることがあります。

ただし、後から「言った・言わない」になりにくくするためには、契約内容が書面やデータで確認できる状態になっている方が安心です。

実務では、労働条件通知書と雇用契約書を別々に作る場合もあれば、1枚にまとめる場合もあります。

「労働条件通知書兼雇用契約書」と書かれている場合は、通知と合意確認の両方の役割を持たせていることがあります。

仕組みとしては、入社時や更新時に条件を確認する

労働条件通知書や雇用契約書は、主に入社時、契約更新時、条件変更時に関係します。

正社員の場合は、入社時に労働条件が示されることが多いです。

契約社員やパート、アルバイトの場合は、契約期間があるため、更新のたびに条件を確認する場面があります。

派遣社員の場合は、派遣元との雇用契約に加えて、就業条件明示という形で、派遣先での勤務条件が示されることがあります。

就業条件明示とは、派遣先で働く場所、業務内容、指揮命令者などを確認するための情報提示です。

一方、業務委託やフリーランスは、雇用契約ではありません。

そのため、労働条件通知書や雇用契約書ではなく、業務委託契約書、発注書、注文書、請書、請求書などで条件を確認する流れになります。

働き方で何が変わる?

正社員の場合

正社員は、期間の定めがない雇用契約であることが多いです。

そのため、入社時に示された労働条件に加えて、就業規則も重要になります。

就業規則とは、会社全体の働き方のルールをまとめたものです。

給与、勤務時間、休職、退職、転勤、服務規律などは、雇用契約書だけでなく就業規則にも書かれていることがあります。

契約社員の場合

契約社員は、契約期間、更新の有無、更新判断の基準が大切です。

労働条件通知書には、契約期間や更新に関する内容が書かれることがあります。

2024年4月以降は、有期契約の場合、更新上限の有無や内容なども確認したいポイントになっています。

「次も更新されると思っていた」という不安を減らすためにも、書面で確認しておくことが大切です。

派遣社員の場合

派遣社員は、雇用主が派遣会社です。

働く場所は派遣先でも、雇用契約を結ぶ相手は派遣元になります。

そのため、雇用契約の内容は派遣元と確認し、実際の勤務場所や業務内容は就業条件明示などで確認する流れになりやすいです。

同じ「勤務条件」という言葉でも、雇用契約上の条件と、派遣先での就業条件が分かれる点に注意が必要です。

パート・アルバイトの場合

パートやアルバイトでも、労働条件の確認は重要です。

「短時間だから簡単でよい」というものではありません。

時給、勤務日数、シフト、休憩、残業、社会保険の加入、契約更新の有無などは、生活に直結します。

特にシフト制の場合、予定される勤務日数や時間の考え方を確認しておくと安心です。

業務委託・フリーランスの場合

業務委託やフリーランスは、雇用ではなく、仕事の依頼を受ける形です。

そのため、労働条件通知書や雇用契約書ではなく、業務委託契約書などで条件を確認します。

準委任は、作業や業務の遂行を依頼する契約です。

請負は、成果物の完成を目的とする契約です。

報酬、納期、修正対応、経費負担、支払日、契約解除、損害賠償などは、雇用とは違う観点で確認する必要があります。

労働条件通知書と雇用契約書を分けて考えるメリット

条件の見落としを減らしやすい

労働条件通知書を見ると、勤務時間、賃金、休日、契約期間などを一覧で確認しやすくなります。

口頭説明だけでは忘れてしまう内容も、書面やデータがあると後から見返せます。

生活設計にも役立ちます。

合意内容を確認しやすい

雇用契約書があると、会社と働く人がどの条件に合意したのかを確認しやすくなります。

特に、契約社員やパートなど契約期間がある働き方では、更新時の条件確認にも役立ちます。

不安を言葉にしやすくなる

書類があると、

「ここが分からないです」

「この条件はどういう意味ですか」

と質問しやすくなります。

漠然とした不安が、確認できる項目に変わることがあります。

心理的にも、少し落ち着いて判断しやすくなるかもしれません。

デメリットやつまずきやすいポイント

書類名だけで安心してしまう

「雇用契約書があるから大丈夫」

「労働条件通知書をもらったから問題ない」

と思っても、内容を読まないままだと見落としが残ることがあります。

大切なのは、書類名ではなく、中に何が書かれているかです。

金銭条件が分かりにくいことがある

基本給、手当、固定残業代、交通費、賞与、退職金などは、書き方によって分かりにくいことがあります。

特に固定残業代は、何時間分なのか、超過分の扱いはどうなるのかを確認したい部分です。

業務委託の場合は、税込・税抜、源泉徴収、振込手数料、支払日なども確認が必要になります。

手続きの流れを理解しにくい

入社時は書類が多く、労働条件通知書、雇用契約書、誓約書、身元保証書、社会保険関係の書類などが一度に渡されることがあります。

どれが契約条件に関する書類なのか分からなくなることもあります。

不明点は、担当者に「この書類は何を確認するものですか」と聞いてみると整理しやすいです。

会社と本人で受け止め方がズレることがある

会社側は「説明した」と思っていても、働く人側は「そこまで理解できていなかった」と感じることがあります。

特に、転勤、配置転換、更新上限、残業、休日出勤などは、後から不安になりやすい項目です。

署名する前に、分からない言葉をそのままにしないことが大切です。

確認チェックリスト

・書類名が「労働条件通知書」「雇用契約書」「労働条件通知書兼雇用契約書」のどれになっているか確認する

・契約期間、更新の有無、更新判断の基準を確認する

・就業場所と業務内容、変更の範囲を確認する

・賃金、手当、交通費、賞与、退職金の扱いを確認する

・始業時刻、終業時刻、休憩、休日、残業の有無を確認する

・社会保険や雇用保険の加入条件を担当窓口に確認する

・就業規則の確認方法を聞いておく

・派遣社員の場合は、派遣元との契約内容と派遣先での就業条件を分けて確認する

・業務委託やフリーランスの場合は、業務委託契約書、発注書、支払条件を確認する

・分からない点は、署名前に人事、総務、派遣元担当者、発注元担当者などへ質問する

ケース1:契約社員のAさんの場合

Aさんは、半年契約の契約社員として入社することになりました。

会社からは「雇用契約書にサインしてください」と言われました。

ただ、Aさんは更新があるのか、賞与はあるのか、正社員登用の可能性はあるのかが気になっていました。

書類を見ると、契約期間、更新の有無、更新判断の基準が書かれていました。

ただし、賞与については「会社規程による」とだけ書かれており、詳しい条件は分かりませんでした。

Aさんは、人事担当者に確認しました。

すると、賞与の対象や算定方法は就業規則と社内規程に書かれていると説明されました。

また、正社員登用については制度自体はあるものの、登用時期や基準は部署や実績によって変わるとのことでした。

Aさんは、雇用契約書だけでなく、労働条件通知書にあたる内容と就業規則を合わせて見る必要があると分かりました。

すべてが一度に明確になったわけではありませんが、確認すべき場所が分かったことで、不安は少し整理されました。

ケース2:フリーランスのBさんの場合

Bさんは、フリーランスとして企業から記事作成の依頼を受けました。

相手からは「雇用契約書はありません」と言われ、少し不安になりました。

ただ、Bさんの場合は雇用ではなく業務委託です。

そのため、労働条件通知書や雇用契約書ではなく、業務委託契約書や発注書で条件を確認する必要があります。

Bさんは、報酬額、納期、修正回数、支払日、キャンセル時の扱いを確認しました。

すると、報酬額は書かれていましたが、修正回数と支払日は曖昧でした。

Bさんは、契約前にメールで確認し、発注書にも支払条件を入れてもらいました。

雇用契約書がないこと自体よりも、業務委託として必要な条件が確認できているかが大切だと分かりました。

Bさんは、雇用と業務委託では見るべき書類が違うことを理解し、次回からは契約前に確認する項目を自分でも用意することにしました。

Q&A

労働条件通知書と雇用契約書は両方ないといけませんか?

短く言うと、雇用される場合は、労働条件を明示することが大切です。

雇用契約書は、会社の運用によって作成方法が分かれることがあります。

ただし、条件を確認できる書面やデータがないと、後から不安になりやすいです。

「労働条件通知書兼雇用契約書」として1つにまとまっている場合もあるため、書類名だけでなく内容を確認しましょう。

会社によって違う部分はどこですか?

違いやすいのは、書類の名前、様式、署名の有無、就業規則との関係です。

同じ正社員や契約社員でも、会社によって書類の出し方は変わることがあります。

また、賞与、退職金、転勤、更新基準、手当などは、就業規則や社内規程に書かれていることもあります。

分からない場合は、人事や総務に「どの書類を見れば確認できますか」と聞くと整理しやすいです。

業務委託でも労働条件通知書はもらえますか?

基本的には、業務委託は雇用契約ではないため、労働条件通知書ではなく業務委託契約書などで条件を確認する形になります。

ただし、実態として働き方が雇用に近い場合は、契約名だけでは判断できないこともあります。

指揮命令の有無、勤務時間の拘束、報酬の決まり方、仕事の進め方などが関係します。

不安がある場合は、契約書、業務内容、やり取りの記録を整理し、専門家や相談窓口に確認するとよいかもしれません。

まとめ

・労働条件通知書は、会社が労働条件を明示するための書類

・雇用契約書は、会社と働く人が合意内容を確認するための書類

・実務では、両方の役割を1つの書類にまとめることもある

・正社員、契約社員、派遣社員、パートでは、確認すべき条件が少しずつ違う

・業務委託やフリーランスは、雇用ではなく業務委託契約書などで条件を確認する

書類の名前が似ていると、不安になるのは自然なことです。

大切なのは、「何の書類か」だけで判断せず、自分の働き方に関係する条件がどこに書かれているかを確認することです。

分からない点を質問することは、わがままではありません。

安心して働くための準備として、ひとつずつ整理していけば大丈夫です。

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