この記事を読む前に
この記事は、退職金の差を考えるための一般的な整理です。
実際の金額や条件は、会社の制度、就業規則、契約内容で変わります。
不安が強いときは、人事・総務の窓口や就業規則を確認し、必要に応じて労働局や専門家に相談すると整理しやすくなります。
導入
「正社員は退職金がある。非正規はない」と思われがちです。
ただ、実際にはそれほど単純ではありません。
差が出るのは、雇用形態そのものだけではなく、
会社に制度があるか、誰が対象か、何年勤めたか、どう計算するか、という部分です。
ここでは、まず言葉の意味をそろえたうえで、
仕組みと確認ポイントを順番に見ていきます。
まず結論
- 差は小さく収まるとは限りません。会社に退職金制度がない、または対象外であれば受け取れない一方で、厚生労働省の調査では、勤続20年以上・45歳以上の定年退職者の平均退職給付額は、高校卒現業職で1,183万円、高校卒の管理・事務・技術職で1,682万円、大学・大学院卒の管理・事務・技術職で1,896万円でした。つまり、見方によっては0円と1000万円台の差まで開きえます。
- 正社員だから必ず退職金があるとは言い切れません。退職金制度そのものは法律上の必須制度ではなく、会社が設けているかどうかが出発点になります。
- 非正規でも、退職金がある場合はあります。大事なのは「正社員かどうか」だけではなく、制度の有無、対象者、最低勤続年数、計算方法、退職理由、会社規模を一つずつ確認することです。厚労省調査では、退職給付制度がある企業割合は全体で74.9%、30〜99人企業で70.1%、1,000人以上企業で90.1%でした。
用語の整理
退職金という言い方は日常的ですが、統計や制度では「退職給付」と表現されることもあります。
中身は、退職時にまとめて受け取る退職一時金と、年金型で受け取る退職年金に分かれることがあります。
また、退職金は、会社が制度として設けている場合に動くものです。
制度があるときは、対象者、支給条件、計算方法、支払時期などを就業規則に定める考え方になっています。
契約社員やパート・アルバイトなどの有期雇用では、採用時に「退職手当の有無」を文書などで明示することが求められています。
一般の労働条件通知でも、退職金制度を設けている場合は、その事項を明示する前提です。
仕組み
雇用で働く場合、退職金は毎月の給与のように自動で見えるものではありません。
まず会社に制度があり、そのうえで自分が対象者に入っていて、さらに勤続年数や退職理由などの条件を満たしたときに支給される流れが一般的です。
モデル就業規則でも、退職金制度を設ける場合は、対象範囲、支給要件、額の計算、支払方法、支払時期を定める形になっています。
一方で、業務委託やフリーランスでは、会社の退職金制度に乗るという考え方ではなく、報酬と将来の備えを分けて考えることが多くなります。
このため、同じ手取りに見えても、雇用と非雇用では「退職時にもらえるお金」の発想自体がずれやすいところです。
働き方で何が変わる?
正社員は、長く勤める前提で制度設計に組み込まれていることが多く、勤続年数が積み上がるほど退職金の差が大きくなりやすいです。
厚労省の調査でも、定年退職者の平均退職給付額は1000万円台でした。ここから見えてくるのは、退職金の差は月給の差だけでは測りにくいということです。
契約社員、パート、アルバイトなどの非正規では、まず対象かどうかの確認が欠かせません。
同じ会社にいても、正社員とは算定方法や付与基準が異なることがあります。
JILPTの企業調査でも、退職金の基準が正社員と異なる理由として、業務内容、責任の重さ、異動範囲、労働時間や日数の違いなどが挙げられていました。
派遣社員の場合は、働く場所ではなく、雇用主である派遣元の説明資料や就業条件を確認する視点が大切です。
「一緒に働いているから同じ退職金のはず」と考えると、ずれが生まれやすくなります。
また、パート・有期雇用労働者や派遣労働者については、不合理な待遇差の解消や待遇差の説明が制度上のテーマになっています。
業務委託やフリーランスでは、退職時に会社からまとまったお金が出る前提では考えにくいです。
そのため、報酬が高く見えても、将来分の備えを自分で含めて考える必要があります。
ここは、月額報酬だけで比較すると見落としやすいところです。
メリット
退職金まで含めて働き方を比べると、年収の見え方が少し立体的になります。
月給だけでは高く見える仕事でも、長い目で見ると差が逆転することがあります。
制度の有無を早めに確認しておくと、転職や更新の判断がしやすくなります。
入ってから気づくより、前もって見ておくほうが仕事選びの軸が整いやすいです。
将来のお金を言葉にして整理すると、漠然とした不安が少し小さくなることもあります。
「なんとなく損かもしれない」という不安が、「何を確認すればよいか」に変わるだけでも前に進みやすくなります。
デメリット・つまずきポイント
金額の差が見えにくいことです。
退職金は毎月の明細に強く出ないので、目先の給与だけで判断すると、生涯でもらえる総額を見誤りやすくなります。
手続きや条件が細かいことです。
最低勤続年数、自己都合か会社都合か、更新をまたいだ年数の扱いなどで、想定と実際がずれることがあります。
心理的なずれも起こりやすいです。
同じ職場で似た仕事をしていても、退職金の対象や計算式が違うと、納得しづらさを感じることがあります。
待遇差について説明を求められる仕組みがあることは知っておきたいところです。
確認チェックリスト
- 労働条件通知書や雇用契約書に、退職金の有無がどう書かれているか
- 就業規則や賃金規程に、自分の雇用区分が対象者として入っているか
- 最低勤続年数があるか。契約更新をまたいだ年数がどう数えられるか
- 自己都合退職と会社都合退職で、支給条件や金額に差があるか
- 退職一時金なのか、年金型なのか、または併用なのか
- 支払時期が退職後すぐなのか、一定期間後なのか
- 契約社員・パートなら、正社員と違う点の内容や理由を相談窓口に確認できるか
- 業務委託やフリーランスなら、契約終了時の精算条件と、自分で積み立てる前提をどう考えるか
ケース
Aさんのケース
Aさんは、更新を重ねて働いている契約社員です。
月給はそれなりに安定していて、仕事内容も正社員に近く感じていました。
ただ、将来のことを考えたときに、
「正社員と同じように働いているのに、退職金はどうなるのだろう」と気になりました。
そこでAさんは、まず労働条件通知書を見直しました。
次に、就業規則と退職金規程で、契約社員が対象かどうか、最低勤続年数があるかを確認しました。
その結果、会社に退職金制度はあるものの、契約社員は別基準で、勤続年数の条件も正社員と異なることが分かりました。
「同じ職場にいる」ことと、「同じ制度に入っている」ことは別だと整理できたことで、今後は更新を続けるか、正社員登用を目指すかを落ち着いて考えやすくなりました。
Bさんのケース
Bさんは、フリーランスとして業務委託で働いています。
会社員時代より月の売上は上がりましたが、数年後の生活まで含めると本当に良い選択なのか、少し不安がありました。
最初は、毎月の入金だけを見て「前より増えた」と感じていました。
けれど、退職金という後ろの支えがないことに気づき、比較の仕方を変えることにしました。
Bさんは、報酬の一部を将来資金として分けて考えるようにしました。
すると、会社員時代の見えない福利厚生や退職金が、どれくらい大きな役割を持っていたかが見えやすくなりました。
収入の多さだけでなく、
将来に残るお金まで含めて働き方を比べることが大切だと、納得感を持って整理できたのです。
Q&A
正社員なら、退職金は必ずありますか?
結論からいうと、必ずとは言えません。
退職金制度は会社が必ず設けなければならない制度ではありません。
ある場合は就業規則などに定める考え方なので、まずは制度の有無から確認するのが出発点です。
非正規でも、退職金が出ることはありますか?
あります。
ただし、正社員と同じ基準とは限りません。
パート・有期雇用労働者については、雇入れ時に退職手当の有無を明示することが求められているため、通知書や契約書、就業規則で対象範囲を確認しておくと整理しやすいです。
会社や案件で違う部分はどこですか?
特に違いが出やすいのは、対象者の範囲、最低勤続年数、計算方法、退職理由による差、支払時期です。
また、同じ会社でも、正社員と非正規で算定方法や付与基準が異なることがあります。
待遇差の説明を求められる仕組みもあるため、分からないままにせず、相談窓口や人事に確認してみるのが安心です。
まとめ
- 退職金の差は、月給差より大きく開くことがあります
- 正社員でも制度がない会社はあり、非正規でも対象になる場合があります
- 見るべきなのは雇用形態だけでなく、制度の有無と条件です
- 契約書、労働条件通知書、就業規則を見ると整理しやすくなります
- 業務委託やフリーランスは、退職金の代わりに将来資金を自分で考える視点が大切です
退職金の話は、少し身構えてしまいやすいテーマです。
けれど、今すぐ結論を出さなくても大丈夫です。
一つずつ確認できれば、それだけでも見通しはかなり変わってきます。


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