はじめに
この記事は、部署異動やグループ会社への移動があったときに、無期転換ルールの通算契約期間がどう考えられるかを一般的に整理するものです。
実際の扱いは、契約の相手方が誰か、出向なのか転籍なのか、契約書や就業規則にどう書かれているかで変わることがあります。迷いが強いときは、社内窓口や労働局、労基署、専門家などに落ち着いて確認していくのがよいと考えられます。
導入
「同じ会社の中で部署が変わっただけだから、たぶん通算されるはず」
「グループ会社に移ったけれど、実質は同じような働き方だから通算されるのでは」
こうした迷いは、とても自然です。
無期転換ルールでは、見た目の働き方だけでなく、だれが法律上の使用者かが大きなポイントになります。
そのため、部署名や勤務場所だけで判断すると、かえって分かりにくくなりやすいです。
ここではまず、通算の基本的な考え方を押さえたうえで、部署異動とグループ会社移動で何が違うのかを順番に整理していきます。
まず結論
部署異動だけで、契約の相手方である会社そのものが変わっていなければ、通算されるケースが多いです。
グループ会社へ移る場合は、同じグループ内でも法人が別なら、通算の考え方が変わることがあります。見た目が似ていても、法律上の使用者が変わるかどうかの確認が大切です。
出向、転籍、派遣などは言葉が似ていますが、通算を見るときの意味がずれやすいため、契約書と人事通知を合わせて見ることが重要です。
用語の整理
通算契約期間
同じ使用者との間で結んだ有期労働契約の期間を合計したものです。
無期転換ルールでは、この通算契約期間が5年を超えるかどうかが基準になります。
同一の使用者
ここでいう使用者は、事業所や部署ではなく、法律上の契約主体を見ます。
法人であれば、基本的にはその法人単位で判断されます。
部署異動
同じ会社の中で、営業部から総務部へ移るような人事異動です。
部署名、職種、勤務地が変わっても、契約相手の会社が同じなら、通算される方向で考えやすいです。
グループ会社移動
親会社、子会社、関連会社など、同じ企業グループ内の別法人へ移ることです。
グループ内でも法人が別であれば、通算を考えるうえでは別の使用者として扱われる場面があります。
出向
元の会社との雇用関係を残したまま、別の会社で働く形を指すことがあります。
実務では細かな形が分かれるため、だれと労働契約を結んでいるかの確認が大切です。
転籍
元の会社との雇用関係が終わり、新しい会社とあらためて雇用契約を結ぶ形です。
この場合は、契約主体が変わるため、通算の考え方も変わりやすいです。
仕組み
無期転換ルールは、同一の使用者との間で有期契約が更新され、通算5年を超えたときに、労働者が申し込める仕組みです。申込みがあると、使用者は断れないとされています。
このため、まず見るべきなのは、毎回の契約更新でだれが契約相手だったかです。
給与の支払元、雇用契約書の名義、就業規則の適用先、人事発令の出し手などが手がかりになります。
雇用の場合は、契約書や労働条件通知書、就業条件明示の書面をたどると流れが見えやすいです。
採用、更新、異動、出向、転籍のたびに、名義や条件が変わっていないかを確認します。
一方で、業務委託やフリーランスは、そもそも労働契約ではなく、発注者との業務委託契約や請負契約で動くことが多いです。
そのため、無期転換ルールの通算という考え方は、通常の雇用契約とは別物として整理する必要があります。請求、検収、支払サイト、再委託制限など、確認ポイントも変わってきます。
働き方で何が変わる?
正社員・契約社員・パート・アルバイト
これらは雇用契約の中での呼び方の違いであり、有期契約であれば無期転換ルールの対象になることがあります。
名称そのものより、期間の定めがあるか、契約相手が同じかが重要です。
同じ会社の中で、部署だけが変わった場合。
たとえば本社から支店、営業から事務へ変わっても、法律上の使用者が同じなら、通算される方向で考えられます。
派遣社員
派遣で働いていると、実際に働く場所は派遣先ですが、雇用契約の相手は派遣元です。
そのため、無期転換の申込み先や通算を見る相手も、一般には派遣先ではなく派遣元になります。
グループ会社へ移る雇用
ここが迷いやすいところです。
同じ看板、同じ建物、同じ業務内容でも、雇用契約の相手がA社からB社へ変わっていれば、法人が別である以上、通算の見え方が変わることがあります。
業務委託・フリーランス
業務委託は、雇用とは違い、無期転換ルールの通算とは別の話になります。
グループ会社間で案件を移されても、契約先や発注書の名義が変われば、報酬や責任範囲、支払条件を別々に見る必要があります。
同じ言葉の「移動」でも、雇用では人事異動、非雇用では契約先変更という意味になりやすく、ここが混同しやすい点です。
メリット
見通しが立てやすくなる
通算の考え方を早めに整理できると、無期転換の申込時期を考えやすくなります。
将来の働き方を落ち着いて考える材料にもなります。
不要な思い込みを減らせる
「グループ会社だから全部同じはず」と思い込まずに済むと、後からの食い違いを減らしやすいです。
逆に、部署異動だけで不必要に不安になることも減っていきます。
確認先が明確になる
契約書、人事通知、就業規則、派遣元、社内窓口など、どこを見ればよいかが整理しやすくなります。
気持ちの面でも、確認の順番が見えると少し安心しやすいです。
デメリット・つまずきポイント
金銭面の見通しがずれやすい
通算されると思って生活設計を立てていたのに、法人が別だったため前提が変わることがあります。
更新時の収入見込みや退職後の予定に影響することもあります。
手続き上の見落としが起きやすい
異動通知だけを見て安心し、雇用契約書の名義変更を確認していなかったということがあります。
出向と転籍の違いも、書面を見ないと分かりにくいことがあります。
心理的に納得しにくい
実際の仕事がほとんど同じだと、法人が違うだけで扱いが変わることに戸惑いを覚えやすいです。
このズレは珍しいことではなく、だからこそ「実態」だけでなく「契約主体」を丁寧に見る必要があります。
確認チェックリスト
- 雇用契約書や労働条件通知書の会社名は、異動前後で同じか
- 更新のたびの契約書に、契約主体の変更が書かれていないか
- 人事発令が「異動」なのか「出向」なのか「転籍」なのか、文言を確認したか
- 給与明細の発行元や社会保険の加入先はどこになっているか
- 就業規則がどの法人のものか、担当窓口に確認したか
- 派遣の場合、派遣元と派遣先のどちらが雇用主かを整理したか
- グループ会社移動の際、退職扱いと再入社扱いになっていないか
- 空白期間がある場合、その期間と前後の契約のつながりを確認したか
- 社内の人事・総務へ、無期転換ルール上の通算の考え方を質問したか
- 判断に迷う場合、都道府県労働局の相談窓口や専門家に書面を見せて相談できる状態か
ケース
Aさんのケース
Aさんは契約社員として、同じ会社で4年半働いていました。
営業部から管理部へ異動し、勤務地も本社から別支店へ変わりました。
Aさんは、「部署も場所も変わったから、通算が切れてしまうのでは」と不安になりました。
けれど、契約書の会社名は変わっておらず、給与の支払元も同じでした。
そこでAさんは、更新時の契約書、人事異動通知、就業規則の適用先を確認しました。
その結果、法律上の使用者は同じ会社のままだと整理できました。
このケースでは、部署や勤務地の変更だけで直ちに通算が消えるわけではないと考えやすく、Aさんは少し納得感を持って今後の申込時期を見通せるようになりました。
Bさんのケース
Bさんは、親会社から紹介される形で、グループ会社の案件を長く受けているフリーランスでした。
見た目は同じチームで働いているようでしたが、契約書の名義は数年の間に何度か変わっていました。
Bさんは、「実質は同じグループだから、継続年数として一つに見てもらえるのでは」と感じていました。
ただ、業務委託は雇用契約とは別で、そもそも無期転換ルールの通算とは考え方が違います。
そこでBさんは、発注書、基本契約書、請求先、支払条件を整理しました。
その結果、契約先が変わるたびに条件の見直しが必要であり、同じグループというだけで一体とは言いにくいことが分かりました。
このケースでは、雇用と業務委託を同じ感覚で見ないことが大切でした。
納得感につながったのは、働く実感ではなく、契約の形を一つずつ見直したことでした。
Q&A
Q1. 部署異動があったら、通算はリセットされますか
結論として、部署異動だけではリセットされないケースが多いです。
同じ会社との有期契約が続いているなら、通算される方向で考えやすいです。契約書の名義、給与支払元、就業規則の適用先を確認すると整理しやすくなります。
Q2. グループ会社へ移ったら、前の年数もそのまま通算されますか
結論として、必ずしもそのまま通算されるとは限りません。
同じグループでも法人が別なら、法律上の使用者が変わることがあります。異動通知だけでなく、転籍か出向か、雇用契約の相手方がだれかを確認することが大切です。
Q3. 会社や案件で違う部分はどこですか
結論として、いちばん違いが出やすいのは契約主体と契約の形です。
同じ職場で同じ仕事に見えても、雇用契約の相手が同じか、派遣元か、別法人か、業務委託かで整理の仕方が変わります。迷うときは、契約書、人事通知、社内窓口の説明を合わせて確認するのがよいです。
まとめ
- 無期転換ルールの通算は、部署名ではなく同一の使用者かどうかが軸になります。
- 同じ会社の中の部署異動や勤務地変更なら、通算されるケースが多いです。
- グループ会社への移動は、同じグループでも法人が別なら見方が変わることがあります。
- 出向、転籍、派遣、業務委託は言葉が似ていても、通算の考え方がずれやすいです。
- 不安があるときは、自分の感覚だけで抱え込まず、契約書や社内窓口を手がかりに一つずつ確かめていけば大丈夫です。


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